増刊号 産婦人科医のための緊急対応サバイバルブック
Ⅲ. 産科編
❹妊産褥婦の合併疾患への対応法
劇症型A群β溶血性レンサ球菌感染症
早田 英二郎
1
1東邦大学医学部産科婦人科学講座
キーワード:
group A Streptococcus
,
GAS
,
Streptococcal toxic shock syndrome
,
STSS
,
Centor criteria
,
quick sequential organ failure assessment
,
qSOFA
Keyword:
group A Streptococcus
,
GAS
,
Streptococcal toxic shock syndrome
,
STSS
,
Centor criteria
,
quick sequential organ failure assessment
,
qSOFA
pp.299-302
発行日 2024年4月20日
Published Date 2024/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409211244
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30歳台,経産婦.妊娠36週の昼頃から下痢を認めた.22時頃に発熱と腹痛が出現したため近隣の産科診療所を受診した.受診時,体温38.8℃,血圧122/74mmHg,脈拍117回/分,SpO2 94%(酸素10L),呼吸回数30回/分,病歴聴取時に少しボーっとした受け答えであった.腹部は板状硬,胎児心拍数陣痛図で繰り返す遅発一過性徐脈を認めた.血液検査などの結果が判明する前に常位胎盤早期剝離,敗血症の疑いで直ちに総合周産期母子医療センターへ救急搬送し,23時頃に搬送先医療機関の手術室に入室し,緊急帝王切開術を実施した.手術中に前医から「妊娠35週に咳嗽および咽頭痛のため経口抗菌薬の内服を開始した」との情報提供を受け,常位胎盤早期剝離のほかに,劇症型A群溶血性レンサ球菌感染症による敗血症を疑った.術中から抗菌薬(アンピシリン,クリンダマイシン)を投与するとともに,輸血,フィブリノゲン製剤,アンチトロンビン製剤などの補充療法,集中治療室での全身管理を行った.血液の培養検査でgroup A Streptococcus(GAS)を認め,Streptococcal toxic shock syndrome(STSS)と確定診断した.
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