連載 FOCUS
〔シリーズ〕産婦人科と先端テクノロジー
ロボット技術による全自動胚凍結機
林 博
1
,
細谷 佳代
1
,
三輪 淳子
1
1恵愛生殖医療医院
pp.948-952
発行日 2020年9月10日
Published Date 2020/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409210146
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はじめに
近年,生殖医療技術の発展とともに培養室内の業務が複雑化し,培養士の負担も大きくなり,人為的ミスが起こりやすい環境となっている.生殖医療に従事する者として,安全にかつ人為的ミスが起こらない生殖医療技術および培養室環境を目指すべきである.一方,わが国では少子高齢化による労働人口の減少が進行し,今後も人手不足に拍車がかかり,慢性的な培養士の不足が予測されることから,培養室業務の効率化などが求められている.そのためには,ロボット技術,およびIT技術やAI(人工知能)技術を応用した培養室の完全な自動化が1つの有力な方法であると考えている.
培養室の自動化というとAIを搭載した自立思考型のヒト型ロボットが培養室業務を行うということを想像される方もおられると思われるが,当然のことながら現在の技術ではきわめて困難である.AIとはこのロボットの脳に当たる部分で実体はコンピュータであるため,IT技術とともに理論的には人為的ミスを起こすことはないと考えられる.
それに対してヒトはミスをする動物であるが,高度な知能をもち学習能力が高く,正確で複雑な動きが可能な「手」をもっている.ヒトの「手」の再現は前述のように現在のロボット技術ではきわめて難しいが,これに対する1つの回答として,胚盤胞のガラス化における平衡処理を自動的に行うGavi®(メルクバイオファーマ)が世界で初めて開発された.
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