今月の臨床 エキスパートに学ぶ―体外受精実践講座
胚の凍結保存法
桑山 正成
1
1加藤レディスクリニック・先端生殖医学研究所
pp.973-977
発行日 2008年7月10日
Published Date 2008/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101817
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はじめに
近年の超急速冷却ガラス化保存法の成功により,従来のガラス化保存法や緩慢凍結法による卵子や胚の凍結保存による障害の概念が一新された.これまで,胚は凍結保存でさまざまな障害を受け,顕著なものは死滅し,また生存胚においても凍結保存胚の移植成績は新鮮胚に劣るとされてきた.しかしながら,超急速ガラス化保存法では,凍結保存後の胚損失,活力の損耗がほとんどないばかりでなく,IVF胚をすべていったん凍結保存し,患者の子宮環境が良好な時期に解凍,移植することにより,新鮮胚移植よりも高い妊娠率が得られるようになった1).
わが国で考案された代表的な超急速冷却ガラス化保存法,Cryotop法2, 3)は,現在700以上の不妊治療施設において,すでに100,000症例以上に適応され,きわめて良好な臨床成績が得られている.開発後これまでに溶液など数回の改良が加えられ,現在の手法では前核期,分割期および胚盤胞期胚においても融解後ほぼ100%の生存率が得られ,さらに卵子の凍結保存も可能となった4).
本稿では,胚の凍結保存における最適ステージや凍結保存のメカニズム,またCryotop法の詳細や成績について概説する.
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