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●動脈の老化
動脈の老化は,全身の老化の一部として生じるプロセスである.血管の最も内側には血管内皮がある.これは血液と血管周囲との間に広大な界面を形成する単層の細胞である.血管内皮の生理的役割は一酸化窒素(NO)分泌である.NOは内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)によって産生され,隣接する血管平滑筋細胞に拡散し,血管を弛緩させ,アテローム形成を防止する.老化した血管では血管の弾力性が低下し,炎症性変化は亢進し,内皮における抗血栓機能が低下,血管新生能も低下し,血管機能の低下をきたす.
●血管年齢
血管年齢の概念は心血管疾患リスクよりも理解しやすい概念である.血管(動脈)年齢を減少させれば,心血管疾患リスクも低下させることができる可能性がある.
●血管機能検査法には以下の検査法が知られている.
①足関節上腕血圧比(ABI)・足趾上腕血圧比(TBI)
②脈波伝播速度(baPWV)
③stiffness parameter β:心臓足首血管指数(CAVI)
④血管内皮機能
⑤動脈壁の評価による動脈硬化性
●予防・対処法
①エストロゲン : エストロゲンの血管保護作用と,動脈硬化危険因子に対する作用が影響すると考えられている.HRTによる血管内皮機能改善も報告されている.
②テストステロン : テストステロン濃度の低下と心血管病との関係についても多数の報告がある.テストステロン分泌の低下が心血管病に関係する要因としては,エストロゲンと同様,血管に対する直接作用と,危険因子に対する影響が挙げられる.
③その他 : 動脈の老化を遅らせたり,若返りさせたりできる可能性のあるものに,スタチンや糖尿病治療,抗酸化治療の有効性も期待できる.統合的な血管のアンチエイジングが期待される.
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