連載 FOCUS
子宮再生
升田 博隆
1
,
丸山 哲夫
1
1慶應義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.600-604
発行日 2018年6月10日
Published Date 2018/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409209425
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はじめに
再生医学とは,臓器や組織の人工的な再生を図る学問であり,近年,再生医学は幹細胞学とともに目覚ましい発展を遂げている.自己複製能と多分化能をもつ細胞と定義される幹細胞は,生体内において発生・再生・創傷治癒を担うと考えられ,臓器や組織の再生を図るにはこの幹細胞を使用する方法が最も理にかなっている.生体内のすべての細胞への分化能をもつ未分化性の高い胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)は,一見使い勝手がよさそうだが,腫瘍化への配慮や,胚細胞から分化細胞へ至るまでの分化誘導を再現する必要があり容易ではない.また,成人の各組織に存在し組織内の細胞への分化が可能と考えられる体性幹細胞(組織幹細胞)も,それぞれの臓器が多種多様な細胞により複雑な構造をとることから同定や分離が困難であり,大多数の固形臓器では体性幹細胞の正確な同定まで至っていない.
そんな中でもより効率的な臓器再生が模索されており,動物の体内でヒトの臓器を作成する試みやscaffoldに細胞を注入し臓器構築を促す試みなどが行われている.
この再生医学の中で最もイメージしやすい臨床応用は,さまざまな疾患や機能の低下により臓器の置換が必要である場合であり,生命維持器官に対する再生医療を目指した再生医学が最も注目され発展する傾向にあるが,種の保存にとって不可欠な卵巣や子宮といった生殖器官の再生も無視できない重要な領域である.実際に,卵子や精子といった生殖細胞の幹細胞学・再生医学はここ数年で劇的に進展している.
本稿では,子宮の再生に焦点を当てて概説する.
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