合併増大号 今月の臨床 難治性の周産期common diseaseへの挑戦
扉
海野 信也
1
1北里大学医学部産科学
pp.5
発行日 2016年1月10日
Published Date 2016/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409208580
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2008年以降,日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会による『産婦人科診療ガイドライン 産科編』の発刊と定期的な改定が行われるようになり,わが国の産科診療は標準化の方向に大きく変貌した.現場では,ガイドラインの存在を前提として個別症例の診療方針を検討し,選択していると考えられ,特に2008年以降に研修を始めた産婦人科医は,そのような枠組みの中でのみ診療を行ってきている.周産期医療の主要疾患である切迫早産・早産,胎児発育不全,妊娠高血圧症候群は,ガイドライン上は対処法がある程度確立しているかのような記載になっている.しかし,いずれもcommon diseasesに含まれる発生頻度の高い疾患であるにもかかわらず,病因・病態に基づいた管理が行われているとは到底言えないのが現状である.治療成績も満足すべきものとなっていない.特にこれらの妊娠合併症が再発あるいは反復する少数の症例については,きわめて難治性で標準的治療では対応できず,探索的な対応の検討が必要となる.
また,産科において最も重要な診断名である「胎児機能不全」は,その病態や重症度を評価する方法が事実上存在しない.胎児の状態の評価方法については新たな方法論が強く求められている.
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