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北欧ケアとは何か? 北欧諸国(ここでは,スウェーデン,デンマーク,フィンランド,ノルウェー,アイスランドの5か国を考えている)は,環境保護先進国かつ福祉先進国としてよく知られている。なかでもスウェーデンは,1996年に「緑の福祉国家」というヴィジョンを打ち出し,目標としてきている。その根底には,医療,看護,リハビリ,介護,福祉,保育,教育を含む広い意味での「ケア」についての独自の考え方があるように思われる。それをここでは,「北欧ケア」と呼ぶことにしたい。そこには,現代日本が抱えている問題を根本から考えなおすとともに,看護を広い視野のなかで捉えなおすための手がかりがあるのではないか。そこに学びたいと私たちは考えた。
振り返ってみると,日本の医学は,明治期はドイツから多くを学び,第二次大戦後は米国から多くを学んできた。看護学もほぼ同様で,1つ加えるとすると,ナイチンゲールの思想と看護学校とを英国から学んだことで,以降の看護理論はその多くを米国(あるいは英国,カナダ,オーストリアも含めた英語圏の国々)に学んだと言えよう。1990年代以降,介護や福祉の世界では北欧から学ぶことが多かったものの,看護領域では,私の知るかぎり,北欧に関するテーマで特集が組まれることはなかったのではないだろうか。多くの看護職者にとっては,北欧の看護や医療については未知のことも多いのではないかと推察する。ノーベル医学賞は,スウェーデンのカロリンスカ研究所で選考が行なわれること,また一部の研究者の間では知られているように,「死の定義」についてスウェーデンが米国の「死の統一判定法」とは異なる独自の考え方をもっていることなどからは,スウェーデンの医学の水準の高さをうかがうことができる。看護の領域でも,北欧には米国とは異なる考え方があり,そこから学ぶことは多いように思われる。それを探りたいと思う。
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