特集 MATERNAL ADJUSTMENT
帝王切開術における呼吸応答
菅谷 和江
1
,
田中 亮
1
,
野見山
1
Kazue Sugaya
1
1北里大学医学部麻酔科学教室
pp.445-447
発行日 1989年5月10日
Published Date 1989/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207998
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従来より,妊娠するとその生理的変化から呼吸機能に影響があることはわかっている。妊娠初期にはプロゲステロンによると思われる変化で,1回換気量・分時換気量の増加が見られ,1回換気量の増加から呼気予備量の減少・機能的残気量の減少がひきおこされている。肺活量は妊娠によっても変化しないとするものと,するとする意見があるが,妊娠末期に横隔膜が挙上して胸郭の前後径が拡大してくると全肺気量が5%ほど低下する1)。
妊婦ではこの分時残気量の増加,機能的残気量の減少のために吸入麻酔薬の導入,覚醒が速くなっている。しかし,至適酸素化は速いという意見もある2)が,機能的残気量減少のために動脈血の酸素化能力が障害され3),容易に動脈血酸素分圧は低下する。言いかえれば,酸素化され易いが,低酸素状態にもなりやすいということである。痛みによる興奮や子宮収縮から酸素消費量が特に増加する分娩時は低酸素血症に陥りやすい。硬膜外麻酔を含め,分娩時の局所麻酔は鎮痛という点からは酸素消費量を減少させ,有利に作用する。
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