特集 最新の避妊法
免疫性避妊の試み
香山 浩二
1
,
礒島 晋三
1
Koji Koyama
1
,
Shinzo Isojima
1
1兵庫医科大学産科婦人科学教室
pp.1001-1004
発行日 1988年11月10日
Published Date 1988/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207891
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
世界の人口は1980年台の40億から,20年後の21世紀には60億になろうとしている。この爆発的ともいえる人口増加は,主に発展途上国での人口増加によるものであるが,これは単に発展途上国の問題として解決し得るものではなく,全世界的問題として対策を立てることが急務となっている。従来から,コンドーム,ペッサリー,殺精子薬といった古典的避妊法に加えて,経口避妊薬(ピル),子宮内避妊器具(IUD)あるいは卵管または精管結紮術といった多くの避妊手段が考案され応用されてきたが問題の解決には至っていない。先進国では有効な避妊法も,発展途上国では効を奏さない場合が多い。
近年,ワクチンの普及により地球上から天然痘が姿を消したように,もし集団を対象とした安全で避妊効果の高い避妊ワクチンが開発されれば,世界の人口調節に大きく貢献することは間違いない。このような観点から多くの研究者が避妊ワクチンの開発に取り組んでおり,現在表1に示すような抗原物質が候補にあがっている。hCGに関しては,すでにそのβ-subunitまたはcarboxyterminal peptide(CTP)を用いた臨床試験(phase1)が進められている。精子免疫に関してはいまだ動物実験段階であるが,実際の臨床において全く健康であるのに抗精子抗体を持っているがゆえに不妊で子供が出来ない夫婦が多数存在することから,不妊患者に検出される抗精子抗体の対応抗原を同定して,これを避妊ワクチンに応用しようとする試みがある。
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.