特集 最新の避妊法
避妊と社会
宮原 忍
1
Shinobu Miyahara
1
1東京大学医学部保健学科母子保健学教室
pp.1005-1008
発行日 1988年11月10日
Published Date 1988/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207892
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Ⅰ.第二次世界大戦まで
1940年代までは避妊法は裏の文化に属していた。国家の繁栄は労働力と軍事力に負うところが大きく,そのために十分な大きさの人口を維持してゆくことが至上命令であったからである。たとえば旧約聖書で,神の祝福として「生めよ増えよ地に満てよ。」という言葉が記されていることからも,常にベドウィンの攻撃にさらされている民族において,人口が少ないことが,即,滅亡を意味した背景を読み取ることが出来よう。
避妊が市民権を得にくかったもう一つの理由は,性についての考え方にある。性交のもたらす効果を快楽と生殖に要約できようが,通常の倫理体系で種族保存の見地から生殖を積極的に評価しても,快楽追求は否定的でないまでも消極的に容認されるに過ぎない。
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