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臨床産科において,最大の問題の一つは早産である。早産に原因する未熟児分娩は,児の周産期死因のトップにあげられ,この傾向は開発途上国はもとより,我国を含めた先進諸国においても変わらない。周産期統計によれば,全分娩中の1割弱に早産が起こり,通常2,500g以下の未熟児分娩となり,その2割弱は生後死亡する一方,生存児についても集中医療センターでの長期のケアーが必要で,その場合でも多くの合併症を伴うのみならず,経済的に見ても多大の負担を医療側と家族側にかけているのが現状といえる。早産は,その発生原因については未だ充分に理解されていないが,古くから臨床経験に基づく,いろいろなリスク因子が知られている。
その代表として最も頻用されるCreasyのスコアー系1)を表1に示すが,Mainらは最近このスコアー系(妊娠18週の時点でスコア10点以上)に基づく早産ハイリスク患者を2分し,一方は通常の妊婦検診を行い,一方には子宮収縮の自己検知法などの教育を十二分に行った上で,両群の早産頻度を比較し,その両者の間に差が無かったと報告している2)。この報告では予防的な薬剤使用は行っていないが,そのような子宮収縮抑制薬剤の使用が果たして早産予防に有用か否か未だ充分な統計的裏付けを欠いているため,その臨床的な意義を容易には判断出来ないが,少なくとも十分な患者の教育と緊密な監視のみを主体とするケアー("よく気をつけてね"方式の管理)では早産の予防は出来ないということになろう。さて,いわゆる"prcterm labor"の成因についてはほとんど知られていないわけであるが,この早産の予後,すなわち子宮収縮の抑制の成功,不成功の鍵として破水の合併の有無がある。事実,破水(prcmature rupture of membrane:PROM)が早産に先がけて発生する率は30%とも40%ともいわれており(図1),PROMあるいはPROMそれ自身の成因が早産の発生原因の一つとする考え方が最近の大方の見方であろう。
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