特集 産科DIC
病因と病態
Dead fetus syndrome
鈴木 正彦
1
,
岡宮 久明
1
Masahiko Suzuki
1
,
Hisaaki Okamiya
1
1杏林大学医学部産科婦人科学教室
pp.725-728
発行日 1988年8月10日
Published Date 1988/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207839
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子宮内胎児死亡に血液凝固異常が併発することを最初に報告したのはMolonyら1)で,1949年のことである。翌1950年,Weinerら2)がRh不適合妊娠での子宮内胎児死亡3例に,フィブリノーゲンが低下し,出血傾向を認めて報告し,その後,長期間子宮内に死亡胎児が稽留することにより出血傾向を呈する病態を死児稽留症候群(dead fetus syndrome以下DFSと略す)と称するようになった。しかし,長期間とはどの程度をさすのか,また,出血傾向は現在ではDIC (播種性血管内血液凝固)によるものと考えられてはいるが,その発症のメカニズムなど未だ定説はなく,しかも,最近の主として超音波断層法を中心とした妊婦管理の発達により,死亡胎児が長期間子宮内に留まる例はほとんど皆無となり,これに従ってDFSの報告もみられなくなり,今や過去の疾患となりつつあるのが現状であろう。
しかし,減少したとはいえ,実地臨床にたずさわる産科医が,DICの基礎疾患として念頭においておかなければならない重要な疾患であることに変わりはないものと考える。
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