綜説
白内障手術後の水晶体嚢の線維性混濁とdead bag syndrome
住岡 孝吉
1
,
Liliana Werner
2
,
安田 慎吾
1
,
雑賀 司珠也
1
1和歌山県立医科大学医学部眼科学講座
2Department of Ophthalmology and Visual Sciences, John A. Moran Eye Center, University of Utah, Salt Lake City, Utah, USA
キーワード:
dead bag syndrome
,
水晶体上皮細胞
,
眼内レンズ
,
水晶体嚢
,
lens epithelial cells
,
intraocular lens
,
lens capsule
Keyword:
dead bag syndrome
,
水晶体上皮細胞
,
眼内レンズ
,
水晶体嚢
,
lens epithelial cells
,
intraocular lens
,
lens capsule
pp.63-67
発行日 2023年1月5日
Published Date 2023/1/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002989
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水晶体再建術で水晶体嚢内に固定された眼内レンズ(IOL)の周囲では,術後中長期的な経過中に後嚢内面での水晶体上皮細胞の線維化反応や水晶体線維形成(Elschnig真珠)あるいは赤道部内面でのSoemmerring輪の形成などが観察される。これらは視力低下や眼内レンズの偏位の原因となることから,手術時の水晶体上皮細胞の吸引に代表されるように,この細胞は好ましくない細胞と考えられてきた。しかし,近年,何らかの理由で水晶体上皮細胞が完全に消失し,フロッピーな水晶体嚢が嚢内の眼内レンズを固定できなくなることがある。また,この脆弱化した嚢は内層と外層に分離することが原因でZinn小帯を固定できずに,嚢ごとIOLが不安定化する。この病態を“dead bag syndrome”と呼ぶことが提唱され,対処法としてはIOL毛様溝縫着やIOL強膜内固定などの外科的治療が選択肢になり得る。本稿ではそのdead bag syndromeについて概説する。
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