境界領域の再評価とその展開 特集
老年婦人科学
高齢婦人の皮膚疾患
北村 啓次郎
1
Keijiro Kitamura
1
1埼玉医科大学総合医療センター皮膚科
pp.249-253
発行日 1987年4月10日
Published Date 1987/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207570
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I.皮膚の老化
老化とは,個々の生物体の成熟から死にいたる過程をいうが,病理学的には,細胞や組織の退行性の変化ともいえよう。しかし今日では,核DNA (遺伝子)の情報がRNAを介して細胞・組織・個体の形成と維持を司るという生命の基本的機構そのものの衰退・退化として把握理解されている1)。
「しわはよる,ホクロもできる,背もかがむ,頭はげるか,毛白くなる。」との狂歌にもある如く,皮膚の老化現象つまり老徴の代表である皮膚の"しわ"は,線維芽細胞の核DNAの情報による生成物である膠原線維・弾力線維・基質などの質的,量的な退行性の変化の皮膚表現と考えられている1)。さらに老化には遺伝的および環境的な因子が関与し,特に露出部の皮膚では紫外線が強く影響する。そのために純粋な意味での老徴と,単に高齢者に見られやすい現象つまり見かけの老徴との境界は極めて曖昧である。皮膚の老化についての臨床・病理学的所見に関する特集号的文献があるが,その中で興味あるものを抜粋すると以下の如くである。
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