症例
産褥期にみられたtoxic shock syndrome
山下 隆則
1
,
中村 恒一
1
,
石丸 忠之
1
,
山辺 徹
1
Takanori Yamashita
1
1長崎大学医学部産科婦人科学教室
pp.861-865
発行日 1986年11月10日
Published Date 1986/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207494
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Toxic shock syndrome (TSS)はブドウ球菌の産生する外毒素が原因となって起こる症候群であり,月経時のタンポン使用のほか,外科的手術や分娩後などにおける発症例の報告がある。今回経験したTSSは妊娠末期に発症したものである。妊娠40週1日,破水感にて某医院に入院し,水様性下痢,悪心および嘔吐が出現。さらに突然39°Cの発熱がみられ,分娩後2時間にて,四肢冷感および呼吸困難が出現し,血圧測定不能となり,当科へ入院した。入院後多発性筋肉痛,耳下腺腫脹,口腔咽頭粘膜の発赤および皮膚紅斑が出現し,Tofteらの診断基準と照合し,TSSと診断した。入院中,急性腎不全状態となり,さらにDICを併発したが,適切な処置により無事退院した。かかるTSSの報告は本邦では極めて少なく,なかでも妊娠・分娩時発症例の報告はいまだみられない。そこで,TSSの経過ならびに診断と治療について文献的考察を加えて報告する。
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