先進医療—日常診療へのアドバイス 特集
感染症とその化学療法
Current concept
産婦人科感染症の動向とその治療
松田 静治
1,2
Seiji Matsuda
1,2
1江東病院産婦人科
2順天堂大学医学部産婦人科
pp.413-420
発行日 1986年6月10日
Published Date 1986/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207394
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診断技術や抗生剤はじめ各種薬剤を含めた治療法の多様化につれ,近年多くの疾患に変貌がみられているが,感染症の分野では病像や起炎菌のうえで特にその傾向が著しい。
産婦人科領域における感染症は術後感染として発病することが多いうえに,近年のそれは弱毒細菌やウイルスなどによるopportunistic infection, endogenous infec—tionとして表現されるように,その発症には宿主側の因子が大きく関与するほか,各種薬剤や放射線治療,手術などによる広義の医原性感染も見のがせないところである。このように宿主の弱味につけこんだ感染はそれ自体単純な感染ではなく難治性感染症が多い。その背景の一つは,compromised hostあるいはimmunocompromisedといわれるような易感染状態宿主の増加であり,oppor—tunistic pathogenがこの場合の原因菌である。他方,菌側からみると耐性化と抗生剤に不感受性の菌の存在があり,さらに治療面からはグラム陰性桿菌に対する抗生剤の抗菌力がいまひとつ弱い点が誘因となろう。したがって難治性感染症はわが領域でも基礎疾患や各種の誘因をもつ者に誘発されたものが少なくなく(図1),基礎疾患の症状や各種の治療の影響で感染症もゆがめられ,診断や治療に難渋する場合が多いのである。
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