症例
超音波により妊娠早期に診断し得た心臓脱の1例
加賀山 哲夫
1
,
岩間 洋一
1
,
鴨志田 和久
1
,
金子 義晴
1
Tetsuo Kagayama
1
1日立製作所日立総合病院産婦人科
pp.865-868
発行日 1984年11月10日
Published Date 1984/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207086
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心臓脱とは,本来心臓のあるべき縦隔洞より心臓が逸脱して体外または胸腔外に存在するものをいい,稀な先天性心臓奇形である。我々は,妊娠早期に超音波断層法による胎児スクリーニング検査を施行した際,心臓脱を合併した無脳児と診断し得た症例を経験したので報告する。
妊娠16週では,児頭は不明であり,児体部頭側に躯幹と接した直径19mmの嚢胞状echoを認めた。この時には,心臓は?幹内で拍動していた。児頭の奇形を疑い,妊娠20週に再度超音波検査施行。児頭の輪郭は不鮮明であり,児頭の横断面でmidline echoが確認出来ず,無脳児と診断した。また胎児躯幹外に拍動する心臓を検出し,胸郭へ連続する大動脈の像より,心臓脱と診断した。本症例は妊娠16週から20週の間に心臓脱が進行し,妊娠16週に認められた嚢胞内に心臓が脱出したと考えられ,心臓脱の発生時期,発生過程を追跡し得た点,貴重な症例である。
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