明日への展開--ヒューマンバイオロジーの視点から 胎盤
早期流産における細胞遺伝学的所見と形態学との相関
大浜 紘三
1
Kozo Ohama
1
1広島大学医学部産科婦人科学教室
pp.825-830
発行日 1984年11月10日
Published Date 1984/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207077
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妊娠初期流産の約半数は妊卵の染色体異常に起因することが明らかにされたことにより,自然流産に対する臨床面からの対応は流産を積極的に防止しようとする立場から,自然流産は一種の自然淘汰であり,ある一定の率での発生は防止しようがないとする見方に変わってきた感がある。流産物の染色体検査は組織培養によってなされるが,しかし,この検査は技術的問題や経費あるいは結果判明までにかなりの日時を要すといった問題などのために,特殊な施設を除いては実施されていないのが現状である。
染色体異常の種類と流産物の肉眼所見あるいは組織所見との間の関連性を明らかにすることは,胎児発育や器官分化に及ぼす遺伝子の制御機構への解明につながるだけでなく,臨床的にみても,面倒な組織培養を行わなくても流産児の核型が高い確率で推定できるわけで,この問題の検討が強く望まれるところである。しかし従来から流産物の肉眼所見や組織所見と染色体異常の関連性に対しては,産婦人科医からも病理学者からもあまり積極的な取り組みはなされておらず,現在の段階ではこの問題を十分満足せしめるような知見は得られていないように思える。ただ少数ではあるがこの問題を検討した報告もみられるので,本稿ではHonoré et al.1)やBoué etal.2)の成績を基にし,さらに自験成績を混じえて染色体異常と流産物所見の相関性について述べてみたい。
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