明日への展開--ヒューマンバイオロジーの視点から 性機能と中枢--その生理と異常
電気生理学的にみたゴナドトロピン分泌機能
植村 次雄
1
Tsugio Uemura
1
1横浜市立大学医学部産婦人科学教室
pp.689-694
発行日 1984年9月10日
Published Date 1984/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207049
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視床下部・下垂体・卵巣系の機能を内分泌生理学的面より追跡する際に,脳の活動状態を把握しうる実験法は欠くべからざるものであり,その中でも有力な手段は電気生理学的な方法であるといえる。実際には,脳の活動電位として,脳波(electroencephalogram,EEG),誘発電位(evoked potencial),多ニューロン発射活動(multiple unit activity,MUA)単一ニューロン発射活動(single unit activity)などの記録がおこなわれる。
EEGは太い電極で,脳の広い範囲からの電気活動を記録する方法であり,脳の睡眠—覚醒状態を長時間にわたり記録するのに有用な手段である。ヒトにおいても,睡眠—覚醒と下垂体ホルモン分泌との関係が明らかにされてきており,成長ホルモン,ACTH,プロラクチンは睡眠時に多く分泌され,ゴナドトロピンも,思春期には睡眠時に分泌されるといわれている。単一ニューロン発射活動とは個々の神経細胞が活動する際に発生する活動電位であり,これは各神経細胞の活動状態を的確に反映しているといえる。しかし,1つの核内でも,それを構成する神経細胞は一様ではないので,多数の細胞の記録を集積しないと核内細胞群の変化をとらえることは出来ない。また,一定部位から記録した細胞の活動でも,どの方向に軸索を持つ細胞かを確認する必要も起こってくる。
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