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1970年代初頭,ヒトにおいてプロラクチン(PRL)の存在が確立し1),血中PRLのradioimmunoassayによる測定が可能となり2),乳汁漏出無月経症において高頻度に高PRL血症が認められることが判明した3)。一部,血中PRLが正常の乳汁漏出無月経症も存在するが,この病態生理は高PRL血症性乳汁漏出無月経症とは異なると考えられる。今回は,高PRL血症性乳汁漏出無月経症について述べる。高PRL血症を原因別に分類するならば,薬剤によるもの,甲状腺機能低下症,PRL産生下垂体腺腫(prolactinoma)などがあり,さらに明らかな原因の認められない特発性高PRL血症がある4)。高PRL血症性乳汁漏出無月経症に原因に応じた適切な治療(休薬,甲状腺ホルモン,下垂体腺腫別出術,bromocriptine)を行い,血中PRLを正常化すれば排卵周期が回復する5〜7)。したがって高PRL血症における排卵障害はPRLの過剰分泌によるものと考えられる。
PRLの過剰分泌が排卵障害を起こす機構について考える前に,PRLの分泌調節について簡単に述べる。PRL以外の下垂体前葉ホルモソは視床下部より主として促進的影響を受けるが,PRLの分泌は視床下部の抑制的支配下にある。視床下部にPRL分泌抑制因子(PIF)が存在することは古くから知られていた。近年PIFがdopamineであることを示す研究成績が報告されている8,9)。ラットのPRL細胞あるいはヒトの下垂体前葉にdopamine receptorが存在し,in vitroの実験でヒト下垂体のPRL産生がdopamineによって抑制されることが報告されている10,11)。dopamineのantagonistであるspiperoneはヒト下垂体前葉組織およびヒトpro-lactinoma内の単一のhigh affinity siteと結合する11)。thyrotropin releasing factor(TRF)がTSHのみならずPRLの放出も刺激することが知られている12)。正常婦人および男子にTRFを静注投与すると血中PRLは5分以内で増加し20−25分でピークに達する13)。しかしTRFが生理的なPRL分泌刺激因子なのか現在明らかではない。最近,prolactinoma患老の血液中にPRLの分泌を刺激する物質が存在すると報告されている14)。これが生理的なPRL分泌刺激因子であるのかもしれない。
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