産婦人科医療--明日への展開 病態生理の新しい理解
Ⅰ.婦人科篇
子宮内膜症
佐藤 和雄
1
Kazuo Satoh
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.787-790
発行日 1983年11月10日
Published Date 1983/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206896
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子宮内膜症とは,異所性に子宮内膜組織が発生増殖することにより,月経困難症をはじめとする様々な自覚症状および他覚症状をあらわす疾患である。歴史的にはRokitanskyによって1世紀以上昔(1860)に報告され,Sampsonによってendometriosisと命名されて以来研究が続けられているが,未だに謎の多い疾患である。発生機序については従来より多くの議論があり,子宮内膜深部増殖説,子宮内膜卵管移植説,子宮内膜転移性移植説,直接移植説,漿膜上皮化生説,胎生上皮由来説などが提唱されたが,一元論的には説明出来ないほど複雑なものなのであろう。
発症頻度は社会環境の変化に伴いわが国でも近年増加の傾向にあり,ある報告では1962年の開腹術施行例中7.3%に子宮内膜症が認められたのに1966年では18.6%に増加し,また他の報告では1967年13.3%であったものが1975年には38.8%の高頻度になっていた。年齢別には40歳台に最も高頻度にみられ,若年者では14歳で発症したとの報告もあるが,一般に10歳台また50歳を過ぎると少ない。発生部位1)として内性子宮内膜症47.5%,外性子宮内膜症52.5%で子宮(adenomyosis)が最も多く,次いで卵巣,骨盤内びまん性の順で他は頻度は少なくなる。
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