産婦人科医療--明日への展開 病態生理の新しい理解
Ⅰ.婦人科篇
肥満
河上 征治
1
Seiji Kawakami
1
1慶応義塾大学医学部産婦人科
pp.783-786
発行日 1983年11月10日
Published Date 1983/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206895
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Ⅰ.産婦人科における肥満の意議
肥満は健康管理上には各科共通の大きな課題である。従来婦人科領域では体重変動と性機能については,欧米におけるほど本邦においては関心が寄せられなかった。それはいわゆる戦前,戦後10数年間まで(1960年ころまで)は本邦の女性に肥満体はきわめて少なかった。しかし1960年代からは女性の体位は向上した。すなわち摂取カロリーとしての栄養の向上はめざましく,消費カロリー(電化製品,自動車の普及等)の減少がその一因となり,女性の肥満度も欧米に近づいてきた。特に妊婦の体重変動においては,日本の女性は戦前は何人の出産を経験しても母体重には変化なく肥らないということが,世界の関係者からうらやましがられていたが,1960年代からはそれも欧米なみになってきた。
女性の体重変動,とくに肥満が初潮期,妊娠分娩時,閉経期を境として起因すると思われる印象を強くうけるが,その因果関係はいまだ明確ではない。しかし婦人科領域で肥満婦人に月経異常や無排卵症例が同一基準から算出した標準体および不足体重者よりも頻度が多いこと,肥満を伴う無排卵症例が体重減少のみにて排卵誘発に成功する経験をもつことは,否定できない。
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