産婦人科医療--明日への展開 卵巣がんの治療をめぐる諸問題
卵巣がん治療における免疫療法の役割
梅咲 直彦
1
,
須川 佶
1
Naohiko Umesaki
1
,
Tadashi Sugawa
1
1大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
pp.503-510
発行日 1983年7月10日
Published Date 1983/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206836
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卵巣は腹腔内に存在し,比較的可動性を有し,腹膜の被覆もなく癌化にともなう症状の発現が遅い。そのため卵巣癌の臨床診断は自然時期的に遅くなる傾向にあり,したがってその予後は悪い。
近年,シスプラチン等の強力な抗癌作用を持つ化学療法剤の発見により,その一次効果は目覚ましいものがあるが,多数例の検討よりみて生存率の延長には目立った効果を発揮しないと判断される。したがってシスプラチン等による寛解導入療法後に維持療法の適応が考慮されねばならないものと思う。教室では卵巣癌の一次治療後の維持化学療法を長期に行い,図1に示すような生存率の延長を認めているが,Ⅲ,Ⅳ期例においてはやはり生存率が低い。すなわちこれらの症例には維持化学療法単独では限界があり免疫療法を加える意味があるものと考えられる。そこで本著においては卵巣癌における維持免疫化学療法の文献的考察をもとに,免疫療法を加えることの有用性につき検討を加えてみた。さらに特異的免疫療法の効果についても文献的検討,および自験例で評価を行った。次いで現在のところ免疫療法が最も効果的と考えられる癌性腹膜炎に対する免疫賦活剤の腹腔内投与の効果を述べ,最後に免疫療法の将来の展望についても言及する。
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