臨床医のプライマリ・ケア 婦人科疾患と新しい診療術
月経周期異常のプライマリ・ケア—その問題点と対策
五十嵐 正雄
1
Masao Igarashi
1
1群馬大学医学部産科婦人科学教室
pp.591-594
発行日 1982年8月10日
Published Date 1982/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206663
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月経周期異常は,女性の性器疾患の中で頻度の高い,よくある病気(common disease)の一つである。従ってプライマリ・ケアの第一線にある医師がしばしば遭遇する疾患である。しかも万一診断とか治療に誤りがあると,後でとりかえしのつかないことになることがある。例えば性早熟症の患者に対し「心配ない」とか「治療は不要」とか,「あと1〜2年たったら再診する」からとムンテラした場合,その後骨端線が閉鎖してしまえば,その患者は永久的に小人症になってしまい,その患者の一生はその医師のムンテラを信じたために取りかえしのつかないことになる。もう一例をあげると結核性子宮体内膜炎のために過少月経がつづき,ついに無月経になった女性に,結核という診断をつけずに慢然と2〜3年間毎月ホルモン療法を繰返している間に子宮体内膜の病変は着々と進行し,ついに結核に対する化学療法を始めてもすでに遅く,月経は再開せず,永久不妊になってしまう例がときどき認められる。
医学上の診断に当って初診の医師の診断が正しくても正しくなくても,2人目,3人目の医師は初診時の診断に影響されやすい。そういう意味でも初診時の診断,いいかえるとプライマリ・ケアの時の診断や治療方針は重要である。
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