臨床医のプライマリ・ケア オンコロジー
機能性腫瘍にあらわれる症状の特徴
西村 隆一郎
1
,
足高 善彦
1
,
東條 伸平
2
Ryuichiro Nishimura
1
,
Tojo Shimpei
2
1神戸大学医学部産科婦人科学教室
2京都大学医学部婦人科産科学教室
pp.526-529
発行日 1982年7月10日
Published Date 1982/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206647
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悪性腫瘍患者にしばしば内分泌症状が合併することは古くから気づかれていたが,近年のホルモン測定法の急速な進歩により,細胞の腫瘍化とホルモン産生との機能的関連性が注目され,内分泌腫瘍学という一つのフィールドの確立に至っている。何らかの生物学的微量活性物質(ホルモンや酵素)を産生・分泌する腫瘍を機能性腫瘍(functioning tumor)としているが,これは内分泌腺を発生母組織とする腫瘍(正所性)とその発生母組織が本来産生しないホルモンを産生する腫瘍(異所性)とに分類される。
一方,腫瘍,特に癌腫において産生されるホルモンの生成モードや性質が正常時のそれと異なるか否かは重要な点である。たとえば異所性に産生されるホルモンのほとんどは蛋白性ホルモンで,腫瘍性のACTH,β—MSH,hCGなどが検討されてはいるが,現在のところ,それらの蛋白構造上の変化を明確に証明したものはない。著者らは絨毛癌患者の尿中にその末端糖であるシアル酸を欠如したasialo-hCGをみいだしたことより,絨毛細胞の癌化はhCGの転写過程よりもむしろその糖付加過程に影響を及ぼすのではないかと推定している。
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