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子宮摘出後にみる不定愁訴は術前の精神症状の反映
広井 正彦
1
1山形大学医学部産科婦人科
pp.789
発行日 1981年11月10日
Published Date 1981/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206511
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子宮摘出そのもの自体は著しい卵巣機能を直ちに衰退させるものではないが,更年期障害様症状を呈することが知られている。この子宮摘出後にみられるゆううつ,のぼせ,尿症状,疲労,頭痛,めまい,不眠症などを一括して,Richards1)は「子宮摘出後症候群(post-hysterectomy syndrome)」とすることを提唱した。その後Kaltreiderら2)はこれらの症状は子宮摘出により子供を生む能力が消失した反応として起こるものとして「ストレス反応症候群(stress response syndrome)」とすることを提唱している。
しかし,これらの多くの研究は子宮摘出以前の精神状態を考慮に入れず,手術後に出現した何らかの症状を子宮摘出に伴って出たものと過剰に評価してきたところに問題がある。そこですでにHunter3)は従来のretrospectiveの研究でなくpro—spectiveの研究により,術前にすでに存在していた症状が頻回に出てきたことによるとして,むしろ「子宮摘出前症候群(pre-hysterectomy syndrome)」とすべきであるとしている。しかし,この研究は術後わずか3ヶ月ほどのfollow-upに基づいたものにすぎない欠点があった。
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