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妊娠中の連鎖球菌(streptococcus)による感染症
田部井 徹
1
1自衛隊中央病院,産婦人科
pp.764
発行日 1981年10月10日
Published Date 1981/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206507
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周産期における感染症は,母体感染,胎児・新生児感染および産褥感染に大別され,おのおの異なった特徴を有する1)。周産期の母児感染症は圧倒的に細菌感染が多く,最近の起炎菌としては抗生物質などの化学療法の発展に伴い連鎖球菌やブドウ球菌などの強毒菌が減少し,大腸菌その他のグラム陰性桿菌などの弱毒菌の増加がみられる。妊娠中,母体の感染経路は経腟感染が多いが,胎児感染は経胎盤による。連鎖球菌などの強毒菌による母児感染は分娩時の外来菌によるといわれている。新生児感染は出生後に起こると考えがちであるが,実際には分娩前あるいは分娩中にすでに起こっていることが多い。
連鎖球菌(Streptococcus)はグラム陽性を示す強毒性細菌であり,血液塞天上の溶血環形成の有無からα,β,γ溶血性に分け,Lancefieldはさらに血清学的特異性によりA,B,CおよびD群などに分類した。産褥熱の主な起炎菌は,A群β溶血性連鎖球菌が多かった。またLedgerらによると2)産科領域の菌血症を呈した患者144名のうち,34名(24%)が好気性連鎖球菌が検出されたという。松田3)は産褥子宮内感染(産褥熱)にみられる起炎菌の年次的推移を詳細に報告したが,溶血性連鎖球菌の出現頻度は10%前後であり,年次的な変遷がみられなかったという。
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