Modern Therapy リスク症例と手術
糖尿病と手術
足高 善彦
1
Yoshihiko Ashitaka
1
1神戸大学医学部産科婦人科学教室
pp.23-26
発行日 1981年1月10日
Published Date 1981/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206371
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本邦における糖尿病の発生頻度は欧米に比較してはるかに少ないが,糖尿病治療法の進歩により患者の寿命は著しく延長しているし,一般外科的合併症としての糖尿病をもつ患者の数もふえつつある。子宮体癌患者に糖尿病,高血圧,肥満を合併する率が高いことは欧米では古くから知られており,体癌の3主徴(trias)と称されてきた。日本における食生活の変化や,激しい労働からの開放が体癌の増加に結びつくか否かは不明であるが,体癌のふえつつある国や人種では糖尿病や肥満もまた増加傾向を示すといわれている。
婦人科手術における糖尿病患者のとり扱い方は一般外科におけるそれと差はない。かつては糖尿病患者の外科的合併症として,糖尿病性壊疽や,それに起因する感染症が主因をなしていた。インスリンの発見は手術成績を著しく向上させたが,依然として高頻度にこれらの術後合併症が発生していることを念頭において,慎重な術前,術後管理を要することに変わりはない。
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