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新生児の高ビリルビン血症は,全出生児の約5%にみられ,とくに未熟児では成熟児に比べて数倍以上の高頻度に発生するといわれている。新生児の核黄疸を予防するために病的黄疸を早期発見することは,新生児管理にとって極めて重要なことであり,そのためには,頻回の採血により血清ビリルビン濃度を測定することは欠かせない。しかし頻回の採血は児に与える影響が大きく全ての新生児に対して行なうのは困難である。従って,新生児の血清ビリルビン濃度を非侵襲的にだれにでも簡単に測定できる方法が望まれている。現状では,Kramerの方法1),2)やGossetの考案したイクテロメーター2)による肉眼的な簡易判定法が,スクリーニング法として臨床的に広く普及している。すなわち,イクテロメーターによる測定値が3〜4以上を示す場合などに採血を行ない,血清ビリルビン濃度を生化学的に測定して治療方針を決定しているのが現状であろう。一般に使用されているイクロメーターは,児に対する侵襲は極めて少なく簡便であるという利点はあるが,測定者の主観や周囲の明るさ,児の皮膚色素沈着などの影響を受けやすいという欠点がある。
国立岡山病院小児科の山内ら3),4)は,経皮的に新生児の血清ビリルビン濃度を評価できる測定器を新たに創案し,臨床的な有用性について検討を加え報告した。新しく開発された測定器は,重さ280mg,大きさ16×7×3cmと極めて小型であり短時間にだれでもが経皮的に簡単な操作により新生児の血清ビリルビン濃度を測定できる。本測定の原理は,Skin reflectanceを応用したHannemanら6)やPeevyら7)の考案した経皮的な測定法の原理とは全く異なる。105lux secの明るさの光源から発した光が,皮膚表面を通過して,短波長の光は皮下組織に存在するビリルビンに強く吸収され,一部は散乱あるいは反射し,再び皮膚表面にもどってくる性質を利用している。すなわち,もどってきた光をビリルビン吸収係数の大きい波長と小さい波長に分光し,さらに光電変換させて黄色の強さを数値的に表示する仕組になっている。測定法の再現性,正確度は極めて良好で,AO Bilirubinometerによる測定値との相関係数は0.951及び,Michaelsson変法によるAlkali bili-rubin blue法とは0.931と極めて高い相関性を示している5)。
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