FIGO TOPICS 私が感銘を受けた講演
ネパールの医療事情
相馬 広明
1
1東京医科大学産婦人科
pp.956
発行日 1979年12月10日
Published Date 1979/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206159
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第9回国際産婦人科学会に参加のため,始めてネパールから唯一の代表が来日した。ネパール王国カトマンズにあるマタニティ病院のデビア・マラー院長である。彼女は,私どもの大学のナース達へと東京池袋ロータリークラブにおいて講演をしたが,その話の要旨を紹介したいと思う。ネパール国全体で15人しかいない産婦人科医はすべて女医であるが,そのうちの12人は彼女のマタニティ・ホスピタルで働いている。この病院は現在のビレンドラ国王の母君が資金を出し,社団法人がこれを設立したというが,カトマンズの南方を流れるパグマテイ河のほとりに立っている。病床170,昨年1年の分娩数5,500,ここに産婦人科医12人,小児科医1人,内科医1人,麻酔科医1人の15名,看護婦は助産婦を含めて43名が働いている。入院患者の60%は入院費を払えない現状であり,15%ぐらいが10ルピー(240円)ぐらいを払うという。多くはユニセフやその他の寄進による経営であるという。現在ネパールにはトウリブヴアン大学にようやく医進コースができたばかりであり,現在1年生で学生は40名という。そのためこれまで医師になるためには,まずネパールでいう出身階級が上位であり,資産があり,イギリスかインドへ留学するよりほかはなく,限られた特権階級の人々しかなれなかった。
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