実地臨床手技のエッセンス 月経困難症
月経前症候群—その考え方と取り扱い方のコツ
広井 正彦
1
,
川越 愼之助
1
Masahiko Hiroi
1
,
Shinnosuke Kawagoe
1
1山形大学医学部産科婦人科学教室
pp.793-797
発行日 1979年10月10日
Published Date 1979/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206117
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性成熟期の女性では,月経周期に伴って生体内環境,とくにホルモン環境が大きく変動している。したがって,女性においては程度の差こそあれ,このホルモン環境の変化に起因すると考えられる種々の身体的,精神的変化がみられる。こうした変化は,本来は生理的なものといえるが,時に病的に顕症化して前面にあらわれてくることがある。月経時にみられる月経困難症(機能性のもの)もその一つといえるが,これとは別に,頭痛やめまいなどの自律神経症状,いらいら,うつ状態などの精神症状が月経開始の数日前に現われ,月経開始後間もなく消失してしまう場合もしばしばみられる。こうした状態は月経前症候群premenstr—ual syndromeあるいは月経前緊張症premenstrual tensionと呼ばれているが,やはり排卵性月経周期に伴うホルモン環境の変化が原因であろうと考えられている。万引きなどの女性の犯罪や交通事故,自殺,その他の異常な行動もこの時期に集中する傾向がある。
女性の主な犯罪の80%がこの月経前期に発生しているという1)。てんかん発作などもこの時期に頻発しがちであり,躁うつ病などの精神疾患が既存する場合には,やはりこの時期に病像が悪化するともいわれている2)。
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