実地臨床手技のエッセンス 分娩管理へのアドバイス
分娩管理の背景的な諸問題
小林 隆
1,2
Takashi Kobayashi
1,2
1東大
2日赤医療センター
pp.595-598
発行日 1979年8月10日
Published Date 1979/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206079
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産科学の進歩とともに,分娩の管理法も隔世の感を禁じえないほど近代化してきた。たとえば分娩のME的モニタリングは今やルーチン化しており,現在はそのテレメーターリングが志向されている。E3やHPLの測定からさらに進んでDe—hydroepiandrosterone acetate (DHA-S)の静注による胎児胎盤系の機能検査,妊娠時のノンストレス的およびストレス的児心拍連続曲線による胎児リスクの発見,子宮頸管の熟化や開大度の指数化によるBishopスコアやFriedmanの頸管開大曲線の活用,羊水の穿刺によるサーファクタント,諸酵素および染色体などの分析による胎児の未熟性や先天異常の分娩前診断,胎児の血液ガスの測定による仮死の重症度分類など,まさに枚挙にいとまがないほどであり,これらは近代産科学が自負する進歩した診療テクノロジーである。
しかし,実際の分娩臨床においては,これらの進歩した方法論が完備したにもかかわらず,いろいろなつまずきやトラブルが絶えないことも事実である。その原因は筆者の考えでは,分娩という肉体的で植物的なダイナミックの運動現象も,結局は人間的営みとしてまことに複雑で奥深いものであり,われわれが簡単に薬剤や器械で割り切れる対象ではないということであろう。
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