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4,病院に於ける事務部門
病院は患者に適切な環境を提供して完全な診療を行ふところであるので,医療部面が充実されその運営が完全であることが第一の條件であるが,これと共に大きな組織,大きな特殊集團生活をまかなふ事務部門がよく協力し得る充実したものでなければならないことは吉田技官の米式病院組織系統論にもはっきり説明してあり,逐次その樣な組織にしてゆくべきであるが,或る病院では院長の管理も徹底せずさて我國の各種病院の現状はどうであろうか。病院によっては,すべての点からまことにスムースに事務部門が業務を遂行してゐるところもあるが,常に診療部門と対立摩擦を來してゐるところが少なくない。その原因の第一としては,病院内の組織及び各部門の権限区分の不適に由來するものがある。これは勿論官立,公立,法人立又は私立によって,当然ある程度の差はあるべきであるが,それにしても病院の本質から見て一定の方式に沿うのがあやまちを少くする由縁であると思う。第二の原因は人の問題である。ことに事務の長たる人の適,不適,及び院長,並に診療部門の幹部との組合せの適否が重要である。以上の二つの原因に由來すると思われる頻発する事例を掲げて見よう。屡々見られるのは病院事務長が所謂大物を自認し,その事務上からのみの観点で全病院経営を左右し,診療内容の向上を妨げ,診療部門の幹部の不満もかい,院長の管理が滿足に行われない所謂事務長独裁というたぐいのものである。これは私立病院の場合では,事務上,ことに経理面のバランスを中心として経営されるのは止むを得ぬことかも知れず,且院長自らが経営者である場合には,そのこと自身が病院経営の最高方針になっている場合もあって,多少の診療部側の不平はあっても止むを得ぬこととして,摩擦が表面化する余地はないことが多いが(しかしこれでは必らずしも正しい診療内容の向上,工夫は行われない可能性があるが)官,公立,等では大問題であって,ひいては排斥運動などに到ることが屡々ある。
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