特集 妊娠時の生理--その適応と異常
Ⅱ.臓器機能の適応
妊産婦の心理
市川 潤
1
Jun Ichikawa
1
1弘前大学医学部神経精神科学
pp.998-1000
発行日 1977年11月10日
Published Date 1977/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205719
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本稿では紙数の都合により,中枢および自律神経系統あるいは内分泌環境などの適応的な変化には触れず,妊娠および出産をめぐる妊産婦の心理特徴とその変化に焦点をしぼって述べることにしたい。また,著者の専門領域が精神医学であるので,これまで研究対象となった症例はすべて,妊娠中あるいは出産後に精神異常をもって受診した婦人である。したがって,得られた資料は精神障害をもたない一般の妊産婦に比べて特異な側面を有している可能性があることをお断わりしておきたい。しかし,後にも述べるように,この種の精神異常を示した婦人の心理は,正常といわれる妊産婦のそれと多くの共通点をも有しているばかりでなく,むしろ,問題点が尖鋭化・拡大・増強していて,心理特徴を理解するモデルとしては理解しやすいという利点もあろうかと思われる。ここでは,妊産婦の心理を妊娠中および出産後に分けて述べることにしたい。
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