特集 実地臨床における胎児胎盤機能検査法とその判定基準
実地臨床における胎児胎盤機能検査法とその判定基準—総説
中山 徹也
1
Tetsuya Nakayama
1
1昭和大学医学部産科婦人科教室
pp.537-542
発行日 1976年7月10日
Published Date 1976/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205442
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Ⅰ.産科臨床における胎児学の位置
産科学の目的が妊娠・分娩・産褥の各時期を通じて母体の安全を計ることともに,健全なる新生児を出産させることの二つにあることは申すまでもない。しかしながら,従来の産科学はともすれば母体中心であつて,胎児〜新生児への関心は母体に比べれば低かつたことは否めない。この理由としては,胎児は母体子宮という密室の中に手厚く保護されていて,その発育状態や健康状態は母体の腹壁上から間接的に触診あるいは聴診する方法しか存在しなかつたからであろう。X線診断法が産科学に取り入れられて久しいが,主に母体の骨盤計測に応用されているのが実状で,胎児診断に関しては胎齢・成熟度・多胎妊娠や胎内死亡の診断に用いられてきたが,放射線曝量の関係で胎児への応用はなるべく避けたいとの原則のため,実地応用面では限度があつた。
最近の内分泌学・代謝学の進歩,medical elec—tronicsの導入・染色体分析を中心とした遺伝学の進歩などにより母体内胎児の生理ならびに病理が漸く明らかにされはじめ,産科学の中で占める胎児の位置が大きくclose upされて,人類の発展の一つの鍵を握つているreproductionという現象を扱う産科学に,新生面を開くことになつたことは,あるべき当然の姿であるといえよう。
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.