指標
母乳の問題をめぐつて
山内 逸郎
1
Itsuro Yamanouchi
1
1国立岡山病院小児医療センター
pp.497-504
発行日 1975年7月10日
Published Date 1975/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205197
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I.流れは変つた
最近まで多くの産科では,新生児に生後1〜2日で,早くも粉乳を与えてしまうことが,習慣のようになつていた。この軽挙は無反省に繰り返えされ,とりかえしのつかない定着を招いてしまつた。そして産科や産院を退院する時点で,早くも人工栄養になつてしまつた新生児が,急速に増加していたのである。大部分の乳児が,かけがえのない母乳を失つてしまつていることは,小児科医にとつて,見るに忍びないものがあつた。
「新生児に粉乳を与えてはならない」それは危険を伴う。この危険性については,一昨年から学会や産科小児科の学術雑誌あるいは報道機関を通じて,繰り返し警告を発してきた。産科でも小児科でも,十分理解されていなかつたからである。こうして人工栄養の危険性を説くとともに,「新生児には初乳を飲ませなくてはならない」と,初乳の必要性をしばしば唱えてきた。初乳を飲ませようという積極性が,新生児保育の基本方針の中には見られなかつたからである。
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