総合講座 産婦人科と脳
妊産婦の高血圧性脳症
室岡 一
1
,
野原 士郎
1
,
町田 利正
1
,
鯉江 芳行
1
Hajime Murooka
1
1日本医科大学産婦人科
pp.299-302
発行日 1974年4月10日
Published Date 1974/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205026
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I.高血圧性脳症
高血圧性脳症(hypertensive encephalopathy)とは内科,精神科方面で使われている言葉で,Oppenheimer&Fishberg (1928)の提唱による。当初の定義は「高血圧の結果として起こる,一過性の脳機能障害」をいつていたが,その後さらに広範囲のものも含まれるようになり,現在では「脳に器質的傷害を遺す脳血管性発作(Cerebrovascular stroke)を除いた高血圧性の脳疾患のほとんど総てを含める」意味に用いられている。したがつてその概念としては「重症高血圧症,急性または慢性腎炎,子癇などにみられる急性または亜急性の神経疾患で,頭痛,悪心,嘔吐,昏迷,けいれん,昏睡などの一定の神経症状を示す一過性の脳機能障害であり剖検上,脳には変化を見ないか,また見る場合には最も著明な変化は脳浮腫である。」と記載されている。これによつても分るように子癇は高血圧性脳症という概念の中に含まれているのである。すなわち妊産婦が晩期妊娠中毒症にかかり,血圧が上昇し,腎機能が低下して脳血管攣縮,脳乏血を起こすと子癇としての症状が現われてくる。妊産婦にみる高血圧性脳症はこれなのである。
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