特集 分娩管理
母体・児死亡の現状と問題点
唯 正一
Shoichi Yui
pp.103-112
発行日 1974年2月10日
Published Date 1974/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204994
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医学の最近の著しい進歩は医療に細分化専門化の傾向をますます強く要求しており,一面また医学の進歩にこの事実が大きく貢献しており臨床医療の基礎となつているとも考えられよう。一方,最近の公害・薬害などから疫学・統計学が改めて社会的に重視されつつある。私ども臨床家は医療の対患者という個的特性から,ともすれば疫学・臨床統計などを軽視する風潮の存在することも否定できない。私どもの産科領域でも,施設であれ地域であれ国であれ,一集団の医療水準判定のもつとも重要なる尺度というべき母体死亡・周産期死亡率が正しく理解されていない惧れも少くない。
筆者らは昭和38年来大阪府下における母体死亡実態調査を行ない,きわめて明白と考えられる妊産婦死亡の概念にも臨床的に数多くの疑問のあることを痛感してきた。筆者もまた疫学・統計学を充分理解している自信はなく,その説明には誤りのおそれも否定できないが,実地医家にとつて何となくとりつきにくい統計的事実を母体死亡・周産期死亡について考察しつつ,今回筆者が与えられた主題「母体児死亡の現状とその問題点」にこの面から以下いささか私見を加えて見たい。
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