今月の言葉
我が国の母体死亡について思う
木下 正一
1
1賛育会病院
pp.9
発行日 1961年8月1日
Published Date 1961/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202173
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我が日本の妊産褥婦の死亡率は,今からおよそ30年ぐらい前には,世界の列国にくらべて,著しく低率であつた.つまり我が国の妊産婦は,当時は世界中で最も幸福であるとよろこぶことができた訳であつた.
ところがどうであろう.最近の30年ほどの間に他国の母体死亡率はグングンと改善の一途をたどつたのである.それに比べると,まことに残念というか,恥かしいというか,我が国のそれは改善の跡がほんの少ししか認められないで,口惜しくも30余りの国々から追い抜かれてしまつた.嘗つては,世界第2位という優秀な成績を示していた日本が,今では世界の第30何番目という,はなはだ恥かしい順位に下つてしまつたのである.唯々くやしいと言つているだけでは済まされない--日本の女性,妊産婦たちは各国にくらべて,今やまことに不幸な状態におちてしまつたのである.
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