解説講座
電子顕微鏡像—その読みに対する反省
吉村 不二夫
1
,
曾爾 彊
1
Fujio Yoshimura
1
,
Tsuyoshi Soji
1
1慈恵医科大学第2解剖学教室
pp.769-772
発行日 1973年9月10日
Published Date 1973/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204880
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電子顕微鏡が組織学,細胞学,病理学などに応用されてからたかだか20年にしかならないのに,その間に超薄切片の作製技術の向上とともに電子顕微鏡の分解能や加速電圧など,その性能が向上したので,細胞の超微構造の知識は画期的に拡大した。最近では1μ前後の厚い切片を超高圧電子顕微鏡によつてステレオ写真撮影で観察できるようになり,さらに走査電子顕微鏡の開発によつて細胞表面の三次元の立体構造が観察できるようになつた。ごく最近フリーズ・エッチング法によつて任意の切断面に浮かび上がつてきた細胞内部に存在する有形形質,たとえばミトコンドリヤ,ゴルヂー装置,核模などの立体構造を走査型電顕により追求したり,同じ資料をレプリカ法またはシヤドウイング法を採用し,透過型電顕によつても追求することが可能となつた。このように,光学顕微鏡では全く手のとどかなかつた超微構造が最初透過型電顕により二次元の世界で解明されたばかりでなく,細胞表面の三次元の世界も走査型電顕によつて追求できるようになり,さらにエッチング法の応用により立体構造の観察も細胞の表面から内部へと可能となつた。
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