特集 婦人科放射線療法
婦人科悪性腫瘍と放射線療法—特に手術,化学療法との選択,併用
岩井 正二
1
Shoji Iwai
1
1信州大学医学部産婦人科学教室
pp.749-756
発行日 1972年9月10日
Published Date 1972/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204666
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はしがき
悪性腫瘍に対する放射線療法は,正常組織と癌組織との放射線感受性の差を利用することにある。したがつて当該癌組織の感受性いかんが基本となるわけであるが,残念ながらこの感受性についての知識はきわめて乏しい。婦人科癌では卵巣未分化細胞腫のごとく最も放射線感受性の高いものから,Teratomの一部のように正常組織のそれに近いものがあり,他の癌はそれらの中間にあるとされる。しかしいずれにしても,その差はそんなに大きくないから,放射線治療の原則は癌組織にはできるだけ大量を,正常組織にはできるだけ少量を照射することにあるといえる。
以前はしかし癌組織に大量を与えようとしても正常皮膚その他の組織の耐容量を超えるために充分の線量を与えることができなかつた。しかるに最近の治療機械の進歩はめざましく,60Co遠隔照射をはじめ,ベータトロン,リニアックなどの超高圧装置の出現は,骨盤内深部にある婦人性器癌にも充分な大量を与えることを可能にしたが,反面これまで経験しなかつたような副作用発生の危険を生むに至つた。すなわち従来のような皮膚の障害は,ほとんどみられなくなつたが,深部正常臓器への過照射が問題となつてきた。
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