シンポジウム 末期子宮癌の治療
「末期子宮癌の治療」を司会して
藤原 幸郎
1
Yukio Fujiwara
1
1東京医科大学産婦人科
pp.1045
発行日 1971年10月10日
Published Date 1971/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204504
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本日のシンポジウムのテーマは末期子宮癌の治療ということになつている。しかし癌治療の原則は子宮癌に限らず,早期発見,早期治療ということであり,子宮頸癌の場合でも上皮内癌,早期浸潤癌はもとより,第1期B,第2期のものについては,手術療法.放射線療法を中心として,根治療法としての治療方針が一応確立されているわけでもあり,他領域の悪性腫瘍にくらべてもある程度満足すべき成績があげられていることは周知のとおりである。
しかし第3期,第4期のものとなると5年治癒率は著しく低下しており,術前診断が第1期,第2期であつても,手術療法,放射線療法の根治的治療が行なわれたにもかかわらず,なんらかの理由で原発巣を除去すること,あるいは消滅させることができなかつた場合,また局所再発をみた場合,さらに遠隔転移が発生した場合など初回の根治療法が不成功であつたときは患者の予後はきわめて不良となる。また真の意味の末期癌ともいうべき全身転移の発生した患者,癌悪液質の患者についても,子宮が生命維持に必要な器官ではない,かつその周囲にそれに対する侵襲が直接致命的な結果を招くような枢要器官がないという早期癌の根治療法の場合にきわめて有利な条件も,末期癌の場合には耐え難い疼痛を中心とする悲惨な状態が,比較的長期に継続し,対症療法の成否がきわめて重要な課題となることはひごろ痛感されることである。
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