薬の臨床
新抗生物質Vistamycinの基礎と臨床—産婦人科領域における応用
水野 重光
1
,
松田 静治
1
,
森 操七郎
1
,
丹野 幹彦
1
,
佐野 慎一
1
Shigemitsu Mizuno
1
1順天堂大学医学部産婦人科学教室
pp.375-380
発行日 1971年4月10日
Published Date 1971/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204398
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まえがき
抗生物質の生合成,作用機序の解明などの進歩に伴ない新抗生物質の発見ならびに既存抗生物質の種々の誘導体の開発が一段と進み,感染症の治療上大きな恩恵をもたらしているが,一方では耐性菌感染症に対する治療対策が化学療法の分野で最も重要な課題として残されている。従つて薬剤の開発ももつばらこの方面に焦点が向けられているが,最近アミノ配糖体抗生物質(aminoglu-coside antibiotics)に属するVistamycinが本邦で新しく登場した。本剤は明治製菓株式会社により三重県津市の土壌から分離されたstreptomyces ribosidificusより産生され分子式C17H34N4O10からなるKanamycin(KM),Aminodeoxykanamycin(AKM)と近縁関係を有する水溶性塩基性抗生物質である(図1)。Vistamycinはグラム陽性菌および陰性菌に対して抗菌力を有し,筋注により高い血中濃度を示し,生体内で代謝されることなく尿中に排泄され,毒性(急性および慢性)が少なく,聴器毒性もまた低いことが動物実験で指摘されている。
今回われわれは本剤について実験を行なう機会を得,抗菌試験,吸収排泄,体内移行などを検討するほか産婦人科領域の感染症に対する臨床応用の成績について以下報告する。
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