臨床メモ
不妊症患者の自然治癒率
竹内 久弥
1
1順天堂大学産婦人科
pp.79
発行日 1971年1月10日
Published Date 1971/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204344
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不妊症の因子は今日でもすべてが解明されたわけではなく,なかでも機能性の因子についてはなかなかわかり難いものである。事実,不妊を訴えてきた患者に各種の検査を施行し,その原因がある程度明らかになつた場合でも自然に妊娠する例はかなり存在する。
オーストラリア,シドニーのGrant(Aust.N.Z.J.Obst.& Gyn-aec.,9:224,1969)は,この不妊症患者の自然治癒(妊娠)率について興味ある報告をしている。すなわち,彼の扱った不妊症患者2581例について,まず,不妊因子を知るためにインタビューからクルドスコピーにいたる各種の検査を順次施行し,各検査終了後における妊娠率をみたところ,原発性不妊患者では妻のインタビューと夫の精液検査だけで7%,内診(同時に頸管粘液検査のためにcervical plugを除去することを重要視している)とHuhner Test後に8.8%,卵管疎通検査後には17%に妊娠をみたが,内膜試験ソーハやクルドスコピーまで行なつた後の妊娠率は5%以下であつた。すなわち,原発性不妊に対する各種検査の治療効果は35%であつたことになる。続発性不妊でも,同様の結果がみられ,総合的治療効果は33%であつたという。
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