特集 産婦人科診断--最近の焦点
トキソプラズマ
大内 広子
1
1東京女子医科大学産婦人科学教室
pp.1097-1099
発行日 1970年12月10日
Published Date 1970/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204323
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トキソプラズマ(以下「ト」と略す)症と妊娠が合併すると,ときに胎内感染をおこし,その結果流早産,または先天性「ト」症児の出産をみることがあり,産科領域にて問題となるものである。
「ト」症の感染経路は先天性のものは胎内感染,後天性のものは接触感染と経口感染が考えられ,感染源は豚,牛,羊などの食肉,犬,猫,鳥などの愛玩動物の唾液,排泄物が重要である。「ト」原虫が体内に侵入すると最強毒株では8〜9時間,弱毒株では数日〜数週の世代時間をもつて増殖してゆく,まず侵入局所附近,またはリンパ節で原虫が増殖,その後リンパ流,血液を介して全身臓器,組織へ散在する。散在した局所で増殖,またパラジデミー(ト血症)をおこし,そのうち宿主からの抗体産生されるようになり,遊離原虫は殺滅し,細胞内原虫の増殖はとまり,原虫が明瞭な膜をつくり,その中に数百匹存在する。「ト」原虫には増殖型とチステ型があり,増殖型虫体は強毒株感染の急性期に,チステ型虫体は急性感染が慢性期に移行し,虫体の増殖は停止し,チステを形成,長期間宿主体内,特に抗体の作用をうけにくい脳,筋肉内に長く存在する。
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