特集 異常妊娠とその診断
羊水の異常
岩崎 寛和
1
,
井上 好雄
1
Hirokazu Iwasaki
1
1横浜市立大学医学部産科婦人科学教室
pp.597-604
発行日 1970年7月10日
Published Date 1970/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204240
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はじめに——羊水の診断的価値の再認識について
母体内に胎児というheterogousな生体を包含する妊娠という特殊な生理的状態を管理するには,どうしても胎児からの情報を数多く入手する必要があるが,従来は子宮底長やレ線写真から胎児の大きさや成熟度を推定する方法と胎児心音の測定から機能状態を察知する以外には適確な検査法がなく隔靴掻痒の感が大きかつた。このことは与えられたテーマの主要部分を占める羊水過多症に際してもレ線的に胎児奇形の有無を検索し,母体に中毒症その他の異常があるか否かを調べる以外に胎児の危険な状態の程度を判断する方策はなかつたわけである。
最近medical electronics (ME)や胎児—胎盤系に関する生化学的研究が進歩して,胎児心音図および胎児心電図の分析,また母体尿中estriol排泄値をはじめとする各種胎盤機能検査法などが開発されつつあるが,なお不十分な感が強いのは周知のとおりである。かかる意味では胎児血液(臍帯血)を入手するのが理想であるが,妊娠中は不可能なので,比較的容易に観察または採取しうる羊水が,胎児血液ないし胎児の機能状態と密接な相関があることが明確にされるならば,その分析はもつとも直接的な胎児管理の指標となるであろう。
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