特集 性器感染症の診断
産褥熱の診断
水野 重光
1
,
松田 静治
1
,
堀江 勤
1
Shigemitsu Mizuno
1
1順天堂大学医学部産婦人科学教室
pp.295-303
発行日 1970年4月10日
Published Date 1970/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204192
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はじめに
化学療法の発達により,重症産褥熱は著しく減少し,一般産褥有熱例の治療は容易となつたことは確かであるが,軽症ないし中等度の産褥感染例,特に子宮内感染例などは決して頻度は低いとはいえない。抗生物質の濫用ともいうべきほどの使用の影響として,産褥熱感染例の原因となる細菌側の状態は,往年とははなはだしく変遷がみられ,薬剤耐性菌も少なからず発見され,治療薬剤の選択に慎重を要するとともに,病院内では院内に温存されている耐性菌(主としてブドウ球菌)による院内感染という事態にも注目しなければならなくなつた。その他,産褥熱による妊産婦死亡の激減した今日でも,稀に致命的な経過をたどることのあることを十分に念頭におく必要がある。また,普通の妊娠末期分娩後の妊産婦死亡は著しく減つたといつても,内容的には流産後の感染によるものを含めての死亡率は戦前に比し,戦後は増加しているのは注目すべきことである。
われわれの教室においては,10数年来化学療法の発展経過に応じて感染症に対するそれぞれの薬剤の治療効果に関し詳細に観察してきたが,その一部として産褥熱だけをとりあげてみても,必ずしも単純な疾患ではなく,往年の観念で漫然と治療を行なうことは危険であり,正しい診断を下すことが先決問題である。そこで日常経験する比較的軽症の産褥熱,ことに産褥子宮内感染症,さらに時に遭遇する敗血症の診断,これに関連する検査法について述べてみたい。
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