特集 私の手術・Ⅰ
卵巣腫瘍剔出術
飯塚 理八
1
,
市川 敏明
1
Rihachi Iizuka
1
1慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.503-506
発行日 1969年6月10日
Published Date 1969/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204054
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I.手術の適応性
卵巣腫瘍の手術に対する適応の有無について論ずるならば,「卵巣腫瘍の治療法としてはただ手術あるのみ」である。したがつて卵巣腫瘍は手術に対する絶対的適応症といいうる。この点は,症例により手術または照射療法のいずれかを選定すべき子宮頚癌,子宮筋腫などと趣を異にする。ただし悪性卵巣腫瘍ですでに手術不能状態となつたものだけは,レントゲン療法や化学療法の適応となりうる。次に著明な自覚症状を有するものと悪性腫瘍とは論外であるが,なんらの自覚症状を訴えぬもの,ことに外診上不明な小腫瘍は,これをただちに手術すべきか,待期的に処理すべきか,異論がある。しかし卵巣腫瘍は種類のいかんを問わず,「診断の確定とともに手術し,待期的に遷延しない原則」が最も合理的である。腫瘍が急速または徐々に増大し,その発育経過中に茎捻転の突発,周囲臓器との癒着,感染などの合併症,または悪性変化などを起こすものが少なくないので,待期による不利は手術の危険性よりはるかに大であるからである。ただし待期的にしてよい例外は,鶏卵大または鵞卵大までの移動性嚢腫と胞状奇胎または絨毛上皮腫に合併するルテイン嚢腫とてある。
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