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最近臨床医学の実際においても,生理情報や検査データの処理を電子計算機で行なうことによつて,有効な診断効果を得ることができるようになつて来た。多く,臨床診断に用いるための論理演算を行なわせるディジタル形電子計算機は,十分な記憶容量を必要とするために,ハードウエアの面から臨床の実際でオン・ラインシステムで使用することは困難な場合が多い。したがつて,実際に使用する機会は少ないが,具体的に生理情報や検査データの処理を行なつてみると,診断の価値評価から生体の機構や制御にまで近接しうるような資料を得ることができる場合もある。ここては,生理情報として,不妊症の治療や受胎調節に必要な婦人の基礎体温曲線(B.B.T.)をとりあげ,時系列処理(その自己相関係数と予測)を実施してみた。
生理情報処理に使用した電子計算機を例示する。写真はHITAC8400形電子計算機(日立製作所)である。写真の左はH−8400形処理装置(ほぼ半分が見えている)で,ここには,マルチプレクサ・チャンネル,磁気コア記憶装置,浮動小数点演算機構が含まれており,計算機の本体である。中央(人の腰掛けている場所)はコンソール・タイプライタで,人と電子計算機との情報を交換するためのものである。中央の奥は,磁気テープ装置群であつて,大量の情報の記憶ができる。写真の右(コンソール・タイプライタの右隣り)はカード入出力装置(カード読取り機)であつて,カードに記録されている情報を読み取つて,処理装置へ送りだす装置である。右手前はカードせん孔機である。なおここでは見えていないが,情報処理の結果を高速度で打ち出す印刷機であるラインプリンタが設置されている。ここに紹介した電子計算機システムは処理装置の記憶容量は最大262KB (キロバイト)であつて,医学関係の高度の計算も十二分にやつてのけられる能力を有する。
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