考え方・見方
新生児急性腹症の診断
木村 茂
1
1東北大学葛西外科
pp.807-808
発行日 1965年10月10日
Published Date 1965/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203348
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症例解説
出生直後より激しい嘔吐,腹部膨満,呼吸困難などの症状をあらわし,救急的に開腹手術を行なわなければならない疾患として,穿孔性腹膜炎,先天性腸閉塞症,腸の回転異常,先天性巨大結腸症などがあり,これと鑑別を要する疾患も多い。この様な新生児の急性腹症ではとくに経過が速かで全身状態の悪化が急速なので,急いで診断し手術適応を決める必要がある。この際もつとも役立つのはレ線検査である。レ線検査は可能な限り立位,臥位の両方にて撮影し,また注腸造影は診断的価値が高い。
単純撮影にてまず判るのは気腹の有無および腸管拡張の有無である。気腹像一腹腔の拡張,横隔膜の挙上,横隔膜下の遊離ガスすなわち腹腔内腸管外ガス像一が認められれば消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断される。立位では横隔膜下にガスが存在し,滲出液が下方にたまり腹腔内の水面像が明となる(第1図)。臥位では腹腔内は多量の滲出液のため一様な不透明な陰影としてあらわれ,そのなかに腸管ガス像が走り,いわゆるフットボール像として表現される。この際も気腹像がかすかに横隔膜下などに認められる。また腹腔内各所にうすい顧粒状の石灰化像一腹腔内に漏出散在したメコニウムの陰影一が見られれば胎便性腹膜炎の診断が下される。
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